一月物語(いちげつものがたり) 平野啓一郎

読み終わった今も幻の中にいるような、なんとも不思議な小説である。

図書館から借りてきて、何の知識もなく読み始めた私は、まず文章の美しさと読みにくさに手こずり且つ魅了された。

今はほとんど使うことのない古風な言葉を駆使して、明治30年初夏の熊野への山中へと誘ってくれる。主人公の真柝(まさき)が胡蝶の姿に導かれ、深い森に入り込んで・・・それからは夢と現(うつつ)とが混然となり、出口のない迷路のような美しい世界が繰り広げられる。その結末は・・・

 

唯々美しく、退廃的で、泉鏡花の小説を読んだ時の感覚を思い出してしまう。

日ごろ隙間の時間で読んでいるテンポの良く、話の展開の面白い小説とは全く異なり、きちんと読書のスイッチを入れてその小説世界にどっぷりと浸りたい、そんな小説でした。

約20年前、平野啓一郎さんが日蝕で芥川賞を受賞して話題に時にそれは読んでいましたが、これも、同じ時期に書かれたもののようです。この作者、新作が出たとのことで、これも読んでみたいと思っています。