読書日記その18「首里の馬」高山羽根子著

第163回芥川賞受賞作の作品。

実はここ数年、芥川賞受賞作は実験的な試みが多く、私には難解すぎて避け続けていた。

それが、今回は選評を見て、沖縄、資料館、遠隔クイズ、宮古馬・・・なんとも不可思議な取り合わせが気になって読んでみた。選者に平野啓一郎、吉田修一、小川洋子と私が好きな作家たちが名を連ねていることも大きな要因だ。彼らがいいと思うものを共有したいと思ってしまう。

で、実際に読んで、参った。沖縄の幾度もとぎれてしまった重い歴史、それを記録にとどめようとする資料館、社会に溶け込めずそのうらぶれた資料館で過ごす未名子。その未名子が得た仕事は「定められた時間、遠方にいる登録者にクイズを読み、答えさせる」というもの。ここに来て一気にもう何が何だか・・・・登録者も「ヴァンダ」「ギバノ」「ポーラ」とどこの国の人か、どういう事情でこんな孤独な遊びをしているのか皆目見当がつかない。ただ、かなり知的な会話を欲している人だということはわかる。そこに降ってわいたように宮古馬が登場するわけで・・・・

シリアスドラマがファンタジーに、でもそれが不自然ではなく繋がっていく。そして、資料館の存続が難しくなった時、そのデータベースを保存する場所として・・・・

登録者の背景が少しずつ明らかになり、その孤独の深さも見えてくる。何とも不思議な羽根子ワールドにはまってしまった。