読書日記その20 「業平」高樹のぶ子著

話題の高樹のぶ子の伊勢物語。その主人公業平の大ファンだという人の小説なので、どんな魅力的な男だったんだろうと大いに期待して読み始めた。

しかし、正直ガッカリ。というか、私の好みとはずれてるだけ?

なんで、平安というあの時代に彼があれほどまでにもてたのか?それが、最後までピンと来ない。

読み終わった今、色々考えている。

今のトップアイドル並みの容姿とドキドキするような歌を詠み、それがオーラとなって彼を包んでいた。そのことは都の公家の間では評判となっている。御簾から垣間見るその姿に、女たちは胸をときめかす。だから、その業平から文が届くものなら・・・・

その上、彼はマメでやさしい。一度かかわりを持った女性をおろそかにはしない。

 

一夫一妻制などという堅苦しさのなかった時代、御簾の下から見える袖の合わせと白い手、香を焚きしめたその香りで、簡単に恋が成立したようだ。

 

業平も年老いてからは、自分を翁と自重しながらも、「歌は後世まで残っていく」

 

決して豊かではなかったであろうあの時代に、こんなにも生産性のない暮らしを成り立たせていたとは・・・

とあきれる思いだが、そこではたと気がついた。

今のコロナ禍で、不要不急と言われ窮地に立たされているるもの、スポーツや演劇、美術、音楽。

その議論と重なってくる。

業平のような人物を輩出したあの時代こそが、豊かな文化を生み出した時代なのだと。

 

今私は、ひそかな野望を抱いている。いつか私なりの業平を書いてみたい。その時は語り手は、従者の憲明かな。それとも、業平と高子を交互に語らせるかな。と

 

絵草紙のような美しさ

 

まるで文箱のような装丁