読書日記その31「リバー」奥田英朗著

暗くて救いがなくて・・・

この作者ではなかったとしたら、とても最後まで読み切ってはいなかっただろう。

同じ犯罪を扱っていても「オリンピックの身代金」とはあまりにも違いすぎる。

それは、言うまでもなく時代が違うということ。

「オリンピックの身代金」で描かれたのは1960年代。日本全体が繁栄に向かってまっしぐら。とにかく、皆が未来を信じて頑張っていた時代。その中で、都市と地方の豊かさの違いが鮮明にでてきた。そんな印象の小説だった。

片や、今回の「リバー」では、繁栄という流れが止まってしまった現代日本の地方都市の息苦しさと、日の当たる場所で生きられない様々な人々。

舞台は渡良瀬川を挟んだ足利市と桐生市。地方都市の政策として工場を誘致、その結果、その地らしさは失われていく。働き手として流入する外国人と季節工、そして、日本中の地方都市を席巻するショッピングセンター。

その渡良瀬川で連続殺人事件が起こる。十年前の悪夢が甦る。未解決で終わった十年前の連続殺人事件は、被害者遺族の人生を変えてしまった。また、それにかかわった刑事たちにも重くのしかかって・・・・

容疑者として浮かび上がったのは、十年前の事件で拘束しながら起訴できなかった覚せい剤中毒者の池田、県議の息子で引きこもりの健太郎、季節工の刈谷の三人。群馬と栃木の両県警の合同捜査で最前線に当たる刑事、一馬、OBの滝本。新米新聞記者の千野。10年前の事件被害者の父親の芳邦。なかなか進まない捜査・・・・

今回は携帯電話のGPS機能や市中のいたるところに設置されている防犯カメラが今の時代ならではの鍵になっている。

事件に関わった人すべての人生を変えて、行きついた思いもよらない結末。今の時代、そんなこともあるかも、そんな思いで読み終わった。