読書日記その33「風神雷神Juppiter,Aeolus」原田マハ著

大好きな俵屋宗達の風神雷神図屛風。たくさんの傑作を世に残している俵屋宗達。さて、どんな人だったのか。マハさんが好奇心旺盛でやんちゃで、でも絵のこととなるととてつもない情熱と集中力で取り組む少年時代の宗達を目の前に蘇らせてくれた。

織田信長の目の前で見たこともない象の絵を描いて「宗達」の名を授けられる。そして、なんと天正遣欧使節団とともにルネッサンス時代のヨーロッパへ渡るというぶっ飛んだ設定。

上杉謙信に贈るために狩野永徳に描かせた洛中洛外図屏風。それを今度は少年俵屋宗達を加えて再度描かせ、それを宗達の手でローマ教皇へ届けようと。

一方、大村のセミナリオで学んでいた信者の少年たち。ヴァリニャーノ神父の発案で遣欧使節を出すことになり、伊東マンショをはじめ4人が選ばれる。九州の4人と京育ちの宗達、思いも立場も異なる5人が、過酷な3年にわたる旅の中で大きな友情で結ばれる。

リスボンに着いてからは、見たこともない街並み、圧倒的な絵画、彫刻に触れて興奮の日々。また、各地での歓迎を受けて夢のような・・・

私も宗達と一緒に壮大な宮殿に足を踏み入れて、圧倒的な絵画の前に息をのむ

そんな旅を続ける気分で読み進んでいった。特にダヴィンチの最後の晩餐を見たとき、そしてヴァチカンの天井画ミケランジェロの天地創造を見たときの衝撃はたまらない。

そして、最後に同じ絵師を志す少年と・・・

その少年がのちのカラヴァッジョだと暗示しているんだから、本当にマハさんの罠に完全にはまってしまった。

絵画好きにはたまらないというだけではない、歴史小説でもあり、青春群像でもありの本当に欲張りな小説だった。