ドイツ薬学視察旅行~その1

以前から『ドイツ薬学視察旅行』の話は聞いていて、「よし、行こう!!」と決意したその年からコロナへ突入。

もう、行けないのかと諦めていた。しかし、今年は3年ぶりに再開すると聞いて、即座に手を挙げた。

社団法人日本コミュニティファーマシー協会の吉岡ゆうこさんが20年前から行っているこの視察旅行。今回が17回目ということで、行く先々薬局のオーナー、スタッフ、それから大学教授が暖かく迎えてくださって、どこも細部までの見学と、詳しい説明を受けることが出来た。これは、長年続けている吉岡先生があればこそ、そして最強の現地ガイド中村さんの語学力と調整能力の凄さ。そして、ドイツで長年薬局を経営していらっしゃるアッセンハイマー慶子さんの同行。本当に得るものの多い旅だった。

9月25日に成田を出発。北極圏まわりでフランクフルト空港へ到着。中村さんと合流してバスでハイデルベルクへ。ここでNHハイデルベルクホテルに3連泊。初日と2日目にハイデルベルク市内、3日目に列車でロッテンブルクへ往復、そして4日目にバスで移動してケルンへという行程。

まず2日目にドイツの医療、特に薬局の概要と現状などのセミナーを受けた後、見学へ。この4日間で7件の様々なタイプの薬局を見学。ハイデルベルク大学の薬学部で薬学教育についても完璧な中村さんの同時通訳でセミナーを受け、ハイデルベルク城にある薬事博物館とその薬草園を見学。デュッセルドルフではエクスポファーマを視察した。

さて、ドイツは医薬分業発祥の地であり、「薬剤師は科学者である」という自負は日本とは比較にならない。「薬を扱うのは薬剤師のみ、よってその品質には最終的に自分が責任を持つ」として、薬局には調剤室とは別に検査室の設置と、更に週に1品目以上の抜き取りの品質検査が義務付けられている。

処方せんはB6サイズで、処方される薬剤数も少ないようだ。そして、基本的には箱単位での処方のため、調剤室は狭く、錠剤は調剤室の外に保管されている。では、調剤室では何をするかというと、軟膏の混合や液剤の調整、粉薬のカプセルへの充填など。驚くことに分包機はなく、粉薬を渡す時にはカプセルに詰めるとのことで、そのための器具が工夫されていた。

医薬品の区分には3つあり、1つは要処方箋薬。次に薬局指示薬(Apothekenpflichting)これは手に取れないところに置き対面で販売することを義務づけられている医薬品。3つ目は自由販売品(Freiverkauferlichi)手に取ることができる医薬品。

3つ目の薬は効果効能の表記に制限がある分なので、日本でいうところの医薬部外品や健康食品などにあたるもののようだ。

ということで、日本でいうところのOTC医薬品は、必ず対面での販売が必要となる。

ここで、重要な役目を果たすのがPTAという存在。薬学技術アシスタント(Pharmazeutisch-Techiniishe-Assisterten 略してPTA)は2年制の専門学校で学び卒後半年の薬局実習終了後に国家試験を合格した専門職で、調剤のすべてと処方箋薬やOTC薬の対面での販売ができる。逆にできないことは、麻薬処方箋の取り扱い、品質試験に対する署名、夜間勤務など。

見学させてもらったどの薬局でも、薬剤師の3~5倍の数のPTAが働いていた。また、薬学部は2年で筆記試験、2年で口頭試問で卒業、薬剤師の資格はとれるが、その後1年間の薬局での実習を経て「薬局開設許可」がもらえるという。このように薬剤師、PTAとも実習期間が長く、実習生は薬局の大きな戦力にもなっており、給与も支払われる。

また、ドイツの医療制度は日本と同じ皆保険制度だが、かかりつけ医の予約が必要で、日本のようにフリーアクセスではない。その結果、受診までに時間がかかることも多く、最初にアクセスする医療機関として薬局の存在は大きい。

また、ドイツの薬局はかかりつけとして機能するために、処方箋薬とOTC薬がそろう医薬品総合卸が1日数回配達している。慶子さんに見せてもらったレセコンは、OTCにも対応し、お客さんや患者さんと話しながら、添付文書などの情報を取り出し、調剤ロボットを動かして薬をピッキングしたり、ないものはその場で発注することもできる。ドイツでは中規模以上の薬局ではピッキングマシーンは標準設備となっている状況だそうで、日本での全自動分包機の普及と好対照だ。

ただし、薬歴という考え方はないようで、顧客登録を許した方のみ、副作用歴、アレルギーの有無などの記録を残す、これは個人情報の観点からとの答え。顧客登録をした方の購入記録はあっても、指導歴はないということらしい。

ほかにも、色々日本との違いを見ることで、色々考えさせられることは多かった。これからもっと咀嚼して今後の運営方針に反映していかねばならない。

(アイキャッチ画像はショッピングモール内の薬局でのデジタルウォール)