
大好きな朝井まかてさんの描く力強い女性の姿。
大浦慶、名前だけは聞いたことがあるもののいったいどんな人か・・・
激動の幕末の長崎で油商を継いだ慶。港にオランダの船が入港すると走って見に行っては胸躍らせた。細っていく油の取引、その打開策を考えても女であることで石頭の男たちに相手にされない。
何とか海外と交易をしたいと茶葉をイギリスへ帰国する船員に託す。その細い糸が取引に結び付くわけだが・・・
当然のことながら、新たな道を切り開くのは簡単なことではなく、短時間で桁違いの量の茶葉を準備するために産地を走り回る。不可能と思われることを何とかものにしていく慶の姿には胸のすく思いがする。次の取引の為に、茶畑を作り、やがては自分で製茶場をつくる。嬉野のあの茶畑の景色は慶がいなかったらなかったかもしれない。
やがて茶葉貿易を成功させた慶と世界を股に換えたグラバーを含めた外国人貿易商との交友も描かれる。そして、坂本龍馬や大隈重信など幕末の志士たちとの交友も。あの時代に日本に来ている外国人に近い場所にいた慶が見る時代の変遷も興味深い。
慶の冒険譚と慶を取り巻くあの時代の、それも長崎の空気。読んでる私も胸躍らせながら、慶を応援して読み終えた。