11月になり、野山はめっきり花が少なくなってしまいました。その代り、落葉樹の葉が色づき、そして落ちていくにつれて、今まで鬱蒼として目立たなかったサネカズラの実は赤くなって、「ここにいるよ」と存在感を増します。
今年は志賀島でも四王寺でもこの実に会いましたが、何より8月に念願の花を見ることができ、そのかわいらしさ、ひそやかさに百人一首の一句が思い起こされました。
「名にしおあば逢坂山の実蔓(サネカズラ)人に知られで知る由もがな」
サネカズラ(実蔓)Kadsura japonica マツブサ科
生薬名:南五味子(ナンゴミシ)
生育場所:山地に生える常緑つる性木本
利用部位:果実
薬効と用い方:民間薬として滋養強壮、咳止めに実を煎服。
薬用酒は精を養い強壮に役立ち咳を鎮める。
昔、髷を結う男性の整髪料として用いられたことから美男蔓(ビナンカズラ)ともいいます。雌雄異花で夏に葉の付け根に隠れるように咲くのでなかなか見つけられませんが、11月ごろには小さな粒々の実をつけ真っ赤に熟し、こうなるとよく目立ちます。茎径は太いもので2cmになり、葉は互生で有柄、楕円形で光沢があります。
長谷ダムふれあいロードのフェンス越しに見ることができます。また、四王子では群生もみられます。
百人一首、三条右大臣の
「名にしおあば逢坂山のさねかずら人に知られで知るよしもがな」
はこの花の密やかさが秘密の恋を連想させたのでしょう。