読書日記その2 原田マハ著「太陽の棘」

 

キュレーターでもある原田マハさんの美術を題材にした小説、昨年、直木賞の候補にもなった「ゲルニカの暗幕」ですっかりファンになってしまった。

今回のテーマ、戦後の沖縄の美術運動に関しては、全く知識もないまま読み始めた。主人公エドワードは敗戦後の沖縄のアメリカ軍に派遣されてきた、まだ経験の浅い精神科医。一時は画家になることも志したものの断念、しかし未だに絵筆と画集は持っているという人物。前任の京都では、チョコレートを持って町をあるけば子供たちから歓迎されたけれど、ここ沖縄ではかなり様子が違う。

赴任先の「必需品」として父に送ってもらった真っ赤なポンティアックで那覇の町へ繰り出し、そしてニシムイ美術村にたどり着く。そして大きな衝撃を受ける・・・・

戦後の沖縄という日本人にとって、扱いかねる題材を、米国人軍医の目を通して、そして絵画というものを通して見せてくれる。通り一遍でしかなかった私の沖縄への理解が覆った。戦争末期のあの場所の凄惨さ。そして、沖縄人でありながら、その体験を同胞と共有していなかった人々の自責の念。

私は胸をかきむしるような辛さと感動で読み終わって思ったのは、この戦後の美術運動の絵画を見てみたいということだった。

たくさんの人に読んで欲しい本である。