5月の薬木(クリ)

5月、恒例の東区民向けの薬草観察が好転の中、無事に終了した。

私たち薬草同好会のメンバーを中心に、実習生10名にも説明役をやってもらい、区民の参加者65名を案内した。今年はすべての花の開花が早く、例年なら見ごろのはずのナルコユリノアザミシャクゴの花は終わってしまっていて、華やかさに欠けた観察会となってしまった。

会場となる長谷ダムふれあいロードには照葉樹林を構成するブナ科の観察には絶好の場所で、コナラクヌギリの比較をしながら、豊かだった里山の風景に思いをはせる。下草を刈ったりして手入れをしたブナ林は、炭の原料となる薪材を提供してくれて、カブト虫などの昆虫が繁殖して、秋には栗の実やドングリが実る。

この時期は、まさに花の時期で、三日月山や立花山の照葉樹林は新緑の緑の間に黄色のパッチワークで彩られるのだ。

 

 

クリ(栗)Castana crenata   ブナ科

 

生育場所:山野に生える落葉高木

利用部位:葉;栗葉(リツヨウ)

民間薬:うるしかぶれややけどに煎液を外用

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初夏に咲く雌雄異花の雄花は白い房状で強い香りを放ちます。その独特の香りは精液の臭いにもたとえられます。クリは遺跡からも出土し、縄文時代から栽培されていたことがわかっています。また、材は堅くて腐食しにくいので昔は電柱や枕木として使われていました。

樹高は17m、幹は直立して枝が繁り、葉は互生し長さ8~15㎝、先は尖り波状鋸歯(ギザギザ)があります。雌雄同株で夏に咲く雄花穂は直立し、尾状花序に密生させます。雌花群はその根元につきます。ちなみに、よく似たクヌギの葉との見分け方は鋸歯の縁まで緑色なのがクリ、茶色いのがクヌギです。

 

「世の人の見つけぬ花や軒の栗」 奥の細道 芭蕉