読書日記その13「流浪の月」凪良ゆう著

5月は大作「国盗り物語」を懸命に読むことに手いっぱいで、気がついてみたら読みっぱなしの本がたまってしまっていた。

大作は少しお休みして、少し整理をしておこう。

 

今年の本屋大賞受賞のこの本。

主人公は小学生のときに連れ去り事件の被害者だった更紗。そのことが、いつまでたっても好奇の目で見られ、大人になった今も普通のくらしを送ることを妨げている。世間の目は好奇心と同情とで過去の事件を見ているが、更紗の心中は全く違うものだった。

連れ去った犯人とされてる当時大学生の文だが、実は居場所のない自分の方ががついていって、その後二人で過ごした2か月間は最も幸せな時間だった。そして、事件が発覚した時に、小学生だった自分がどんなに「文は悪くない」と叫んでも、大人は聞いてくれなかった。あの時、手を離さなければ・・・

犯人とされた文の人生はめちゃくちゃになっているに違いない。あの時、動物園に行きたいなんで言わなければ、手を離さなければという悔いを引きずっている。そんな更紗にも、その過去を分かったうえで亮と同棲するようになった。

危ういながらも少しずつ普通の幸せに近づいているはずの更紗の前に、あのときとほとんど変わらない姿で文が現れる。

 

この先はネタバレになるので控えるが、幼児連れ去り事件あり、DVあり、また性的マイノリティあり、そして何よりネットの持つ怖さありで、一晩で読んでしまい寝不足のまま出勤する羽目となった。

それなのに、ほかの人にも伝えたいとはあまり思わない。私の好みとは少しずれているかな。

仕事上、いろんな性癖や問題のある例に接することが多すぎるからなのか、この小説はファンタジーとしか思えずふわふわと私の心には響かない。読みやすい小説と、読み終わった後に好きだと思える小説は、似て非なるものだと実感した。