外出制限が続く昨今、せめてもの気晴らしに車を走らせると、山の中に紫の花を見る季節となった。
多くは藤の花、そして、時に桐の花。
桐の花
藤の花、私たちが藤棚で見るのはノダフジ、それに対して林の中でほかの木々に絡まりながら花の房を伸ばしているのはヤマフジ。
蔓の巻き方がSかZかで見分けるのがわかりやすい。
そうそう、ノダフジといえば、八女市黒木の大藤が密集を避けるために、花の房を切り落とされたという悲しいニュースが入ってきた。きっと、来年は今年の分までも大きく咲き誇ってくれることだろう。
ヤマフジ(山藤)Wisteria brachybotrys マメ科
生育場所:山地に生えるつる性落葉低木
利用部位:樹皮にできる瘤;藤瘤(トウリュウ)
民間薬:口内炎、歯肉炎などに煎液でうがい
幹は伸びて枝分かれし、右巻きに他の物に巻きつきます。葉は互生で奇数羽状複葉、小葉の数は11枚、初夏に淡紫色の蝶形花を多数、総状花序に下げますが、フジ(ノダフジ)ほど長くはなりません。因みにヤマフジが右巻きなのに対し、ノダフジは左巻き、小葉の数はヤマフジ9~11枚なのに対しノダフジは11~19枚ということが両者の大きな違いです。
花の後に大きな豆果を観察することができます。
フジは古事記、万葉集、各種勅撰和歌集、源氏物語などに記述があり、古くからウメとともに日本人に愛された樹木です。日本人好みの清楚な美しさを持ち、どの山にもみられるポピュラーな植物であることがその理由でしょう。
「藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君」 大伴四綱『万葉集』